
有酸素運動は寝る前にしていい?睡眠の質を上げる時間と強度を解説
夜になってもなかなか寝つけず、布団のなかで悶々とした経験がある方は決して少なくありません。
仕事や家事で疲れているはずなのに、なぜか寝つきが悪いと感じることもあるのではないでしょうか。
実は、寝る前に体を軽く動かす有酸素運動が、睡眠の質に影響することもあります。ただし、運動の内容やタイミングを誤ると、眠りを妨げてしまうこともあるため注意が必要です。
本記事では、寝る前の有酸素運動が睡眠に与える影響や、質を高める時間と強度の目安をくわしく解説します。
寝る前の有酸素運動が睡眠に与える影響

寝る前の運動と聞くと、体に負担がかかり睡眠を妨げるイメージを持つ方もいるでしょう。しかし、運動の内容やタイミング次第では、睡眠の質によい影響を与えることもあります。
ポイントとなるのが、体の内部の温度を示す深部体温と交感神経の2つです。
深部体温が下がるタイミングと交感神経の高ぶりを抑えるタイミングを調整できれば、寝つきをサポートできる可能性があります。
ここでは、深部体温と交感神経という2つの視点から、寝る前の運動と睡眠の関係を解説します。
深部体温が下がるときに入眠しやすい
布団に入ってもなかなか寝つけないと感じる背景には、深部体温の動きが関係していることもあるためです。
体には脳や内臓など体の内部の温度を示す深部体温があります。
深部体温は日中に上がり、夜になると自然に下がっていく仕組みです。
厚生労働省の情報によると、運動によって一時的に上昇した深部体温が、その後下がっていく過程で眠気を感じやすくなるとされています。(※1)
この体温が下がるタイミングをうまく活用できれば、就寝前の運動でも寝つきの改善につながるでしょう。
※1:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
強い運動は交感神経を高ぶらせる

仕事終わりに軽く汗を流してから眠りたいと考える方も少なくないでしょう。
体を動かすと、心身を活動的にする交感神経が優位になりやすくなります。特に就寝直前の運動は、交感神経の興奮を強く引き起こすとされています。(※2)
交感神経が高ぶった状態では、心と体が覚醒モードに傾き、リラックスして入眠する準備が整いにくくなるためです。
そのため、運動を行う場合は就寝の2〜4時間前までに済ませておくことが推奨されています。とりわけ強度の高い運動ほど、この点に注意する必要があるでしょう。
※2:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
寝る前の有酸素運動が睡眠の質を高める効果

前章では就寝直前の激しい運動が交感神経を刺激する点を紹介しましたが、運動そのものが睡眠に悪影響を与えるわけではありません。
適切な強度やタイミングで習慣的に有酸素運動を続けると、睡眠の質によい効果が期待できることもあります。
特に注目したいのが、寝つくまでの時間と、総睡眠時間・睡眠効率という2つのポイントです。
有酸素運動を習慣化している方は、寝つきがよく、深い眠りも得やすい傾向があるとされています。
ここでは、寝つきと睡眠時間・効率という2つの視点から、有酸素運動が睡眠にもたらす効果を解説します。
寝つくまでの時間が短くなる
有酸素運動というと、本格的なトレーニングをイメージしがちです。
しかし、足早のウォーキングやジョギングなど、体に負担の少ない運動でも効果が期待できるとされています。(※3)
運動習慣のある方は寝つきがよく、夜中に目が覚めてしまう回数も少ない傾向にあるとの報告があるためです。
特に、中途覚醒などの不眠症状が少ないことも、あわせて報告されています。継続的に体を動かすことで、寝つきの改善を具体的に実感しやすくなります。
無理のない運動を選んで習慣化すれば、寝つきの悩みを和らげるきっかけになるでしょう。
※3:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
総睡眠時間が延びて睡眠効率が上がる
体を動かす習慣は、寝つきだけでなく眠りの深さにも関わっているとされています。
習慣的な有酸素運動を続けている方は、総睡眠時間が延び、深い睡眠が増加する傾向にあるようです。(※4)
運動による疲労回復のニーズの高まりと、深部体温リズムの調整が組み合わさることで、睡眠の構造そのものが変化すると考えられています。
その結果として、眠りで休養が取れている感覚、いわゆる睡眠休養感も高まるとされています。日々の運動習慣が、量と質の両面から眠りを支える土台になりうるでしょう。
※4:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
寝る前の有酸素運動でやってはいけないこと

寝る前に運動すればぐっすり眠れるはずだと考えて、つい張り切ってしまう方もいるかもしれません。
ここまで、寝る前の有酸素運動が睡眠によい影響を与える可能性を紹介してきました。ただし、運動の内容や方法を誤ると、かえって睡眠の妨げになってしまうため注意が必要です。
特に注意したいのが、就寝直前に行う激しい運動と、走り込みや強い筋力トレーニングの2つです。
これらは交感神経を大きく刺激し、眠りに入るための準備を妨げてしまう可能性があるとされています。
ここでは、避けるべき運動の内容とタイミングを具体的に解説します。
就寝直前の激しい運動は眠りを妨げる
運動をすれば疲れてぐっすり眠れるはずだと考え、つい就寝直前に体を動かしてしまう方も少なくないでしょう。
しかし、就寝直前の運動は交感神経を興奮させる行為として位置づけられています。(※5)
交感神経が優位になると心身が覚醒状態に傾き、リラックスして入眠するための準備が整いにくくなります。
夜間はもともと自律神経がリラックス優位に切り替わるはずの時間帯であるためです。その結果、寝つきが悪くなるだけでなく、睡眠の質そのものが低下してしまう可能性もあります。
※5:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
走り込みや強い筋トレは寝る前に避ける
ランニングやジョギング、筋力トレーニングなど、息が上がるほどの運動には注意が必要です。
こうした運動を行うと呼吸が速く浅くなり、それに伴って副交感神経の働きが低下してしまうとされています。(※6)
副交感神経は本来、リラックス時に優位になる神経であるため、その働きが弱まると心身が休まりにくくなります。
そのため、これらの運動は眠る3時間前までに済ませておくのが望ましいでしょう。夜更けに行うと、整いかけていた入眠の準備がかえって崩れてしまうこともあります。
※6:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001171393.pdf
寝る前の有酸素運動に適したタイミング

運動はしたいものの、何時間前までに終わらせればよいのか分からず悩む方も少なくないでしょう。
ここまで、寝る前に避けたい運動の内容を紹介してきました。では、実際にどのくらい前までに運動を終えればよいのでしょうか。
運動の強度によって、適切なタイミングは異なるとされています。
激しい運動は就寝の3時間以上前、軽い運動は30分〜1時間前が目安です。厚生労働省の情報では2〜4時間前、寝具メーカーの解説では3時間前までとする目安が示されています。
ここでは、強度別に適したタイミングという2つの視点から、具体的な時間の目安を解説します。
激しい運動は就寝3時間以上前に行う

激しい運動をした日は、どのくらい時間を空けてから眠ればよいか気になる方も少なくないでしょう。
厚生労働省の情報では、就寝の2〜4時間前までに運動を終えることが推奨されています。(※7)
寝具メーカーの解説でも、3時間前を目安とする考え方が紹介されています。
この時間が必要とされる理由は、運動後に高まった交感神経の興奮が収まり、深部体温が十分に下がるまで一定の時間がかかるためです。
この時間を確保することで、体温が下がるタイミングと入眠のタイミングを合わせやすくなります。
※7:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
軽い運動は就寝30分から1時間前が目安
一方で、ヨガやストレッチのような強度の低い運動であれば、就寝の直前に近い時間帯でも取り入れやすいとされています。
具体的には、就寝の30分から1時間前に行うことが推奨されています。(※8)
この時間帯を選ぶ理由は、軽い運動によって上がった深部体温が、ベッドに入る頃に下がり始めるためです。
体温が下がるタイミングと、自然な眠気が訪れるタイミングがちょうど重なりやすくなります。
そのため、リラックス効果を得ながら、自然な入眠へとつなげやすくなっていくでしょう。
※8:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001171393.pdf
寝る前におすすめの軽い有酸素運動

軽い運動といっても、具体的に何をすればよいのか分からず迷う方もいるかもしれません。ここまで、寝る前の運動に適したタイミングを紹介してきました。
では、具体的にどのような運動を取り入れればよいのでしょうか。
就寝前におすすめなのが、ウォーキングとストレッチの2つです。どちらも体への負担が少なく、就寝前でも無理なく取り入れやすい運動として知られています。
気分転換やリラックス効果も期待できるため、日常生活に取り入れやすい点も特徴です。
ここでは、ウォーキングとストレッチという2つの視点から、それぞれの効果を解説します。
ゆっくりしたウォーキングで体をほぐす
ジョギングのような負荷の高い運動は苦手だと感じる方には、ウォーキングがおすすめです。(※9)
特に運動に慣れていない方でも、無理なく始めやすい点が魅力です。ウォーキングは全身を使う運動でありながら、強度を自分のペースで調整しやすい特徴があります。
そのため、気分転換をしながら心身をリラックスさせる方向に近づけやすいとされています。ゆっくりとしたペースで歩くだけでも、程よい疲れを感じながら体をほぐせるでしょう。
こうした手軽さから、就寝前に取り入れる軽い運動としても向いています。
※9:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
軽いストレッチで筋肉をゆるめる
就寝前に取り入れやすいもう一つの運動が、軽いストレッチです。(※10)
軽い睡眠障害を持つ女性7名を対象に、就寝前10分間ストレッチを行った場合と行わなかった場合を比較する研究が行われました。
その結果、ストレッチを行った日は不快な感情を弱めるレム睡眠が出現しやすくなったことが確認されています。
唾液中のストレス指標であるS-IgAの数値低下も、あわせて確認された点です。こうした結果から、寝る前の軽いストレッチは睡眠の質を整える習慣の一つになりうるでしょう。
※10:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
寝る前の有酸素運動の効果を高める強度の目安

運動の強度は数値で管理するのが難しく、感覚だけで判断してよいのか迷う方も少なくないでしょう。
寝る前の運動は種類だけでなく、強度も重要なポイントです。
強すぎる運動は交感神経を刺激してしまう一方、弱すぎると十分な効果を得にくいこともあります。
では、どの程度の強度を目安にすればよいのでしょうか。ポイントとなるのが、会話ができる程度の強度と、息が上がる一歩手前で切り上げる感覚の2つです。
ここでは、この2つの強度の目安という視点から、無理なく続けられる運動の見つけ方を解説します。
会話ができる程度の強度にとどめる
運動の強度を数値で正確に把握するのは難しいと感じる方もいるでしょう。
会話をしながら運動できるかどうかを確認する方法は、トークテストと呼ばれています。(※11)
呼吸が乱れずに話せる状態は、適切な強度の目安とされるゾーン2に近い状態です。この強度帯では、脂肪をエネルギー源とする代謝が中心となります。
乳酸が急激にたまる手前に位置するため、体への負担が少ない点も特徴です。
この強度を保てば、無理なく運動を続けやすくなります。翌日に疲労を持ち越しにくくなる点も魅力的でしょう。
※11: https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/2/106_246/_pdf
息が上がる手前で切り上げる
会話ができる程度の強度に加えて、もう一つ意識したいのが、息が上がる一歩手前で運動を切り上げる感覚です。
厚生労働省の運動指針では、3メッツ以上で息が弾み汗をかく程度の運動を、週60分以上行うことが推奨されています。(※12)
これは週4メッツ・時以上に相当する運動量で、生活習慣病の予防効果が期待できる水準として示されています。
この目安を超えない範囲で体を動かすことが、健康効果を得ながらオーバーワークを防ぐポイントです。無理に追い込みすぎず、心地よいと感じる強度を保つことが大切でしょう。
※12:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001171393.pdf
寝る前の有酸素運動を続けるための工夫

運動の効果を実感できても、続けられなければ意味がありません。とはいえ、忙しい毎日のなかで運動習慣を新たに取り入れるのは簡単ではないでしょう。
特に、意気込みすぎて張り切った結果、長続きしないケースも少なくありません。
続けるためのコツとして重要なのが、無理のない始め方と、時間帯をそろえることの2つです。
短時間から始めて、決まった時間に体を動かすようにすれば、習慣として定着しやすくなります。
ここでは、始め方とタイミングという2つの視点から、無理なく続けるための工夫を解説します。
5分程度の短い運動から始める
運動を習慣にしたいと思っても、いきなり本格的な運動から始めようとすると、長続きが難しくなります。
厚生労働省の情報によると、1日60分の運動が難しい場合は、まず軽く短い運動から習慣にし、徐々に強度や時間を増やしていくことが推奨される方法です。
反対に、運動の強度が強すぎるとストレスとなり、かえって睡眠を妨げてしまうこともあるとされています。(※13)
そのため、まずは5分程度の軽い運動から始め、体を慣らしていくことがポイントです。無理のない範囲で継続することが、寝つきや睡眠の質を整える習慣づくりにつながるでしょう。
※13:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
毎日同じ時間に行って習慣にする
忙しさに応じて、運動する時間が日によってばらばらになってしまう方もいるのではないでしょうか。
実は、そのタイミングを調整しているのが、体内時計と呼ばれる仕組みです。睡眠は深部体温やホルモンなど、体のさまざまな機能と連動しています。(※14)
布団に入る時刻が毎日ばらばらだと、運動や食事にどれだけ気を配っても、快眠につながりにくいのが実情です。
毎日同じ時間に運動や就寝を行うことで、体内時計が整いやすくなります。規則正しい生活リズムを意識することが、快眠への近道になるでしょう。
※14:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
寝る前の有酸素運動とあわせて整えたい就寝前の習慣

運動を意識するだけでも大きな変化につながりますが、あわせて見直したい習慣も他にあるでしょう。
ここまで、寝る前の運動について詳しく紹介してきました。運動に加えて、意識したい就寝前の習慣として挙げられるのが、入浴と飲み物の選び方です。
運動後に湯船で温まることや、就寝前に取る飲み物の量や種類に配慮することも、夜の生活習慣を整えるうえで意識したいポイントです。
こうした習慣を運動とあわせて見直すことで、落ち着いて就寝時間を迎えやすくなるでしょう。ここでは、入浴と飲み物という2つの視点から、就寝前に整えたい習慣を紹介します。
運動後の入浴で深部体温をいったん上げる

運動の後におすすめしたいのが、湯船にゆっくり浸かる入浴です。
40度程度のお湯に10分から15分ほど浸かると、深部体温が入浴後1時間ほどで0.8度から1.0度ほど上昇するとされています。(※15)
この体温の上昇幅が大きいほど、その後の下降も大きくなり、寝つきがよくなるとされています。
あわせて、深いノンレム睡眠が増加する効果も期待できる点が特徴です。そのまま続けて行うことで、無理なく習慣化しやすい点も魅力です。
こうした効果を踏まえると、就寝の1〜2時間前に入浴を済ませておくのがよいでしょう。
※15:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
就寝前の飲み物を選ぶ際の注意点
運動や入浴に加えて、就寝前に取る飲み物の量や種類にも配慮しましょう。
特定の成分を含む飲み物について、研究結果が紹介されていることもあります。ただし、研究で使用された食品の形態や成分量、摂取条件、対象者などは、それぞれ異なります。
そのため、特定の成分を含む飲み物を取ることで、誰でもリラックスできる、あるいは睡眠の質が高まると一律に考えることはできません。
就寝前に飲み物を取る際は、特定の成分の働きを過度に期待するのではなく、自分の体調や生活習慣、摂取量などを踏まえて選ぶことが大切です。
寝る前の有酸素運動を味方に睡眠の質を上げよう

ここまで、寝る前の有酸素運動が睡眠に与える影響や、効果を高めるタイミング・強度・続け方を紹介してきました。
就寝直前の激しい運動は避け、軽いウォーキングやストレッチを適切な時間帯に取り入れることが、質のよい睡眠につながる一つの方法です。
運動後の入浴を取り入れたり、就寝前に取る飲み物の量や種類に配慮したりしながら、無理のない範囲で夜の生活習慣を整えていきましょう。
今日から少しずつ、運動と眠りを整える夜の習慣を始めてみませんか。
