
なぜ寒いと眠くなるの?理由や睡眠不足による影響、睡眠の質を向上させる方法を解説
冬になると日中の眠気が強まることから、寒さそのものが原因ではないかと感じている方は少なくありません。ただし、眠気の背景にあるのは寒さだけではなく、深部体温の変化・日照時間の短さ・睡眠不足も関わっています。
冬の眠気を季節のせいだけで片づけてしまうと、見直せる習慣に気付かないまま過ごすことになりかねません。これらの要因を分けて確認していくと、自分の生活のどこを見直せばよいのかがはっきり見えてくるでしょう。
この記事では、寒いと眠く感じる理由や体温と眠りの関係、冬特有の要因と睡眠不足による影響を整理します。睡眠の質を下げやすい生活習慣や、季節を問わず続けられる対策まで取り上げているため、冬の眠気と向き合うための参考にしてください。
寒いと眠く感じることがあるのはなぜ?

冬になると日中の眠気が強まると感じる方は少なくありませんが、寒さと眠気の関係はそれほど単純ではありません。眠気の背景には深部体温の変化や日照時間の短さ、生活リズムの乱れが絡み合い、1つに原因を決めつけると見直すべき習慣を見落とします。
寒さを感じる場面と眠気が強まる場面を分けて振り返ると、自分に当てはまる要因を絞り込みやすくなります。ここでは、睡眠と体温の関わりや冬の日照時間の影響を踏まえ、寒さと眠気のつながりについて見ていきましょう。
睡眠には体温の変化が関係している
深部体温はおよそ24時間の周期で変動しており、日中の覚醒時に上がった後、夜間の睡眠時には下がっていきます。(※1)就寝前に手足の皮膚の血流が増えると体内の熱が外へ放散され、深部体温が下がり始めるタイミングが、眠りに入りやすい時間帯です。
そのため、寒い時期に手足が冷えたままだと熱を逃がしにくくなり、寝つくまでに時間がかかってしまう場合も出てきます。
日中に感じる眠気にも体温のリズムと生活時間帯のずれが関わるため、1日のなかでの体温の動きを知っておくと、冬の眠気を整理する手がかりになるでしょう。
※1
冬は日照時間が短く体内時計に影響することがある

厚生労働省の資料では、睡眠時間は季節によって変動し、夏季に比べて冬季は10〜40分ほど長くなると示されています。(※2)その主な原因として考えられているのは、日の出から日の入りまでの時間を指す日長時間が短くなることです。
体内時計は朝の光によって調整されるため、日の出が遅くなる冬はリズムを整えるきっかけを受け取りにくくなります。起床しても外が暗いままだと脳が目覚めるまでに時間がかかるため、寒さよりも光の量が眠気に関わっているととらえてみてください。
※2
寒さそのものが必ず眠気を起こすわけではない
寒さを感じたときに眠くなる方がいる一方で、冷たい空気に触れると目が冴えてしまう方もおり、感じ方には個人差があります。寒さと眠気を直接結びつけてしまうと、睡眠不足や生活リズムの乱れといった見直せる要因が隠れたままになりかねません。
冬に眠気が強まる背景には、朝に受け取る光の量の少なさや活動量の低下、夜更かしの積み重ねが関わっていると考えられます。
寒さは眠気を感じやすくする条件の1つであって、眠気そのものを生み出す原因とは限らないため、前日の睡眠時間や朝の過ごし方も振り返ってみてください。
体温と眠りにはどのような関係がある?

眠りと体温のつながりは、寝床に入ってからの寝つきや眠りの深さを左右する要素として広く知られています。特に冬は、就寝前に過ごす部屋の室温に加えて寝床のなかの温度も、深部体温の動きに影響しやすい時期です。
ただし、暖かくすればよいとも限らず、寒すぎる環境も暑すぎる環境も眠りを妨げてしまう場合があるので温度の考え方を知っておく必要があります。ここでは、眠る前に起こる深部体温の変化と、冬の寝室で気をつけたい温度の考え方について確認していきましょう。
眠る前には深部体温が下がっていく
眠りに入る前には手足の末梢の血管が広がって熱が外へ逃げていき、体の内部の温度である深部体温が徐々に下がっていきます。厚生労働省の資料によれば、この熱の放散がうまく進むほど寝床に入ってから眠りに落ちるまでの時間は短くなる傾向です。
同じ資料では、就寝の約1時間から2時間前の入浴が速やかな入眠につながると解説されており、一度体を温めることでその後の熱の放散が促されます。(※3)
ただし、寒いからといって極端に熱い湯に長く浸かると交感神経の働きが高まり、かえって寝つきを妨げる可能性もあります。
※3
寝室が寒すぎるとかえって睡眠を妨げることがある
冬の寝室づくりでは寝床のなかだけでなく就寝前を過ごす部屋まで目を向ける必要があり、場所ごとの注意は次のとおりです。
世界保健機関の住環境ガイドラインでは冬の室温を18度以上に保つようすすめており、急な寒さで血圧が変動しやすくなるとも示されています。(※4)
※4
冬に眠気を感じやすくなる主な要因

冬の眠気は1つの原因で説明できるものではなく、生活や体調、環境に関わる要因が重なって生じていきます。なかでも影響が大きいのは、朝に受け取る光の量と日中の活動量、そして積み重なってきた睡眠不足の3つです。
いずれも本人が気付きにくい変化であり、寒さのせいだと考えているうちに習慣として定着してしまう場合も少なくありません。ここでは、変えやすい要因から手をつけられるよう、冬に眠気を感じやすくなる背景を整理していきましょう。
朝に十分な光を浴びにくい
起床後に朝の強い光を浴びると体内時計がリセットされ、睡眠と覚醒のリズムが整うとともに脳の覚醒度も上がっていきます。厚生労働省の資料によると、この働きが得られる条件は日中に1,000ルクス以上の照度の光を浴びることです。(※5)
冬は日の出が遅いため、出勤や通学の時間帯になっても外が十分に明るくならない日が続き、体内時計が整いにくくなります。
屋内で過ごす時間が延びて受け取る光が足りなくなると、夜間のメラトニンの分泌量も増えにくくなるため、寝つきと朝の目覚めの両方に影響が及びかねません。
※5
活動量が減り生活リズムが乱れやすい

寒さで外出の機会が減ってしまうと日中の身体活動量が落ち、夜の眠りに必要な心身の疲労が蓄積しにくくなっていきます。運動の習慣がない方は睡眠で休養がとれた感覚を得にくいと報告されており、冬は特に活動量が落ちやすい時期といえるでしょう。
また、就寝時刻や食事のタイミングが不規則になると体内時計が遅れたり乱れたりして、朝の目覚めにも影響が及んでしまいます。
朝食を抜く生活が続くと体内時計が後退し、遅寝と遅起きが習慣になりやすいため、寒い時期こそ起床時刻と食事の時間を一定に保ってみてください。(※6)
※6
睡眠不足が重なっている
冬の眠気の背景には、季節に関係なく積み重なってきた睡眠不足そのものが隠れている場合も少なくありません。2023年の国民健康・栄養調査によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は男性38.5%、女性43.6%と報告されています。(※7)
平日の不足を休日の寝だめで取り戻そうとしても眠りをためることはできず、休日に長く眠らないと過ごせない状態は睡眠時間が足りていないサインです。
さらに休日の起床時刻が大きく遅れると体内時計が混乱するため、冬の眠気が気になるときはまず平日の睡眠時間を確かめてみましょう。
※7
睡眠不足が続いた場合に起こりやすい影響

睡眠不足が続いた場合に生じる変化は、日中に眠気を感じるという部分だけにとどまるものではないと指摘されています。厚生労働省は、頭痛などの心身の不調の増加や情動の不安定さ、注意力や判断力の低下が起こりうると示しています。(※8)
こうした変化は少しずつ進んでいくため、寒さや疲れのせいだと受け取っているうちに影響が広がりかねません。ここでは、一時的な体調の波と見分けられるよう、睡眠不足が続いた場合に現れやすい変化を順に確かめていきましょう。
集中力や判断力が低下する
睡眠が足りない状態が続くと注意力や判断力が下がり、作業の効率が落ちてしまうと厚生労働省の資料で示されています。(※9)睡眠が足りているかどうかは自覚しにくいため、仕事や家事の場面で現れる次のような変化に注意してください。
同じ業務をしていても時間がかかり、締め切りに追われやすくなる
見落としや確認漏れが増え、やり直しの手戻りが生じる
学習した内容が定着しにくく、学業成績の低下にもつながる
さらに眠気や疲労が原因となる事故につながる場合もあるため、車の運転や機械の操作をする方は特に注意が必要です。冬は暖房の効いた室内で眠気が強まりやすいため、ミスが増えたと感じたら前の週の睡眠時間を振り返ってみましょう。
※9
気分が不安定になりやすい

睡眠不足は情動が不安定になる変化とも関連しており、普段なら受け流せる出来事にいら立ってしまう場合もあります。厚生労働省は、うつ病などの精神疾患では発症の初期から睡眠の問題が現れると解説し、睡眠の問題自体が発症リスクを高めるという報告も紹介しています。(※10)
気分の変化と眠りの乱れは互いに影響し合うため、どちらか一方だけを見ていても本当の状態はつかめません。気分の落ち込みが2週間以上にわたって続いたり、日常生活に支障が出たりしている場合は一人で抱え込まず医療機関に相談してください。
※10
日中の強い眠気につながる
十分な睡眠の機会を確保できない状態が続くと、日中に強い眠気や居眠りが現れる睡眠不足症候群と呼ばれる状態につながることがあります。必要な睡眠時間には個人差があるため、毎晩6〜8時間眠っている方であっても起こりうると厚生労働省は解説しています。(※11)
目覚まし時計や家族の声がなければ起きられない場合や、休日に平日より大幅に長く眠ってしまう場合は、必要な時間に届いていない可能性があるでしょう。
冬の眠気を寒さのせいだと考えてしまう前に、平日に確保できている睡眠時間そのものを見直してみてください。
※11
寒い季節に強い眠気が続く場合に考えたいこと

睡眠時間を確保し、生活習慣や寝室の環境を整えても眠気が続く場合は、別の原因が隠れている可能性があります。厚生労働省は、睡眠環境や生活習慣を見直しても症状が改善しない場合、睡眠障害が潜んでいる可能性に留意するようすすめています。(※12)
強い眠気が日常生活に支障をきたしているなら、季節や気のせいとして片づけず、続き方と影響を医師に伝えることが大切です。ここでは、強い眠気が長く続く場合の背景として知っておきたい睡眠に関わる病気について見ていきましょう。
※12
睡眠時無呼吸症候群など睡眠に関わる病気
閉塞性睡眠時無呼吸は、睡眠中に気道が狭まって呼吸がしづらくなり、血液中の酸素が不足してしまう病気です。酸素が不足すると覚醒反応が起こって呼吸が再開し、眠ると再び呼吸が止まるという経過を夜間に繰り返していきます。
その結果として実際に眠れている時間が減り、日中の眠気や居眠り、休養がとれた感覚の低下といった症状が現れます。(※13)
発症の危険因子として知られるのは肥満ですが、下顎が小さいなどの身体的な特徴が原因になる場合もあるでしょう。いびきや睡眠中の呼吸の停止を家族などから指摘されたときは、自己判断を避けて医師に相談してみてください。
※13
睡眠の質を下げやすい生活習慣

睡眠の質は眠る直前の過ごし方だけでなく、夕方以降にとる飲み物や夜の光の浴び方によっても変わってきます。特に影響がおよびやすいのは、カフェインやアルコールのとり方と、就寝前にスマートフォンなどから受け取る光の2つです。
どちらも習慣として続いている場合が大半であり、本人は眠りへの影響に気付いていないまま毎晩繰り返しています。ここでは、すべてを一度に変えずに1つから試せるよう、冬の眠りに関わりやすい習慣を順に押さえていきましょう。
夜遅い時間にカフェインやアルコールを摂取する
厚生労働省の睡眠ガイド2023では、1日のカフェイン摂取量の合計が400mgを超えると夜間に眠りにくくなる可能性があると示されています。(※14)
日本ではカフェインの摂取許容量が設定されておらず、400mgは海外の機関が健康な成人向けに示している目安です。(※15)この400mgをドリップコーヒーに換算すると、カップ4杯分にあたるおよそ700ccという量になります。
日本人の血中半減期は3時間から7時間とばらつきがあるため、夕方以降にとると夜の眠りまで残りやすくなります。一方でアルコールは寝酒として使われやすいものの、眠りに対しては次のような働きが知られているため注意が必要です。
寝つきは一時的に促され、睡眠の前半では深い睡眠が増える
睡眠の後半は眠りの質が悪化し、中途覚醒の回数が増える
閉塞性睡眠時無呼吸をはじめとした睡眠障害を悪化させる
毎日の飲酒は依存や耐性を生み、飲まないと眠れない状態を招く
夜遅い時間のカフェインやアルコールは控えめにして、眠るために飲むお酒は習慣にしないようにしましょう。(※16)
※14
※15
※16
就寝前までスマートフォンなどを見る
厚生労働省によると、就寝の約2時間前から眠りを促すホルモンであるメラトニンの分泌が始まっていきます。それ以降に強い光を浴びると分泌が抑えられ、睡眠と覚醒のリズムが遅れて入眠が妨げられると報告されています。(※17)
近年の照明機器やスマートフォンにはLEDが使われており、体内時計への影響が強い短波長光が含まれるため注意してください。
厚生労働省は、寝室にスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして眠るようすすめています。(※18)寝る前の1時間ほどは照明を落として静かに過ごすようにすると、眠りに向けた心身の準備が進みやすくなります。
※17・18
寒い季節の睡眠の質を整える方法

冬の眠りを整えるうえで土台になるのは、朝と日中に受け取る光・寝室の温度・就寝前の過ごし方の3つです。寝床に入る前の1時間は仕事や家事から離れてリラックスできる時間を確保すると、脳の興奮が鎮まりやすくなります。(※19)
眠気が訪れていないのに無理に眠ろうとすると、脳の興奮がかえって高まって寝つきが悪くなってしまいます。ここでは、冬の生活リズムを立て直すうえで要になる朝の光の取り入れ方について、詳しく見ていきましょう。
※19
朝に光を浴びて生活リズムを整える
朝目覚めたらまずカーテンを開けて部屋に光を取り入れ、体内時計を整えるところから1日を始めてみてください。朝と日中にしっかり光を浴びておくと、夜に照明の光を浴びたときの体内時計への影響が小さくなると示されています。(※20)
曇りの日であっても屋外の明るさは室内の照明を大きく上回るため、短い時間でも外へ出る習慣が役立ちます。例えば、次のような工夫であれば寒さで外に出にくい時期であっても、大きな負担を感じずに続けられるでしょう。
通勤や通学で一駅分だけ屋外を歩き、朝の光を浴びる
日中は窓際の席で作業し、屋外に近い明るさを確保する
昼休みに短い時間でも外へ出て、体を動かしながら光を浴びる
※20
寒いときに眠気を感じた場合の対処法

眠気を感じたその場でできる対処として挙げられるのは、特別な準備がいらないものから順に試していける方法です。厚生労働省の資料を踏まえると、職場でも自宅でも取り入れやすい工夫として次のような方法が挙げられます。
短めの仮眠をとる(長い昼寝は夜の眠りを妨げるため避ける)
窓際や屋外に移動して明るい光を浴び、脳の覚醒度を上げる
階段の上り下りやストレッチで体を動かし、血流をめぐらせる
暖房が効きすぎた部屋は温度を下げ、空気を入れ替える
カフェインを利用する場合は、夕方以降を避けて量を抑える
眠気覚ましとしてカフェインをとり続けると効果が弱まっていき、依存が生じる場合もあると指摘されています。(※21)日中の眠気は慢性的な睡眠不足や睡眠障害による場合もあるため、その場の工夫だけに頼るのは避けましょう。
眠気が毎日のように続くようであれば、対処法を増やすよりも夜の睡眠時間を確保するほうが先になるでしょう。
※21
強い眠気が続く場合は睡眠時間や体調を見直そう

冬の眠気と向き合うときに軸となるのは、季節のせいにせず自分の睡眠時間と日中の過ごし方を確かめることです。厚生労働省は成人に対して、1日あたり6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保するようすすめています。(※22)
ただし、適正な睡眠時間には個人差があるため、日中の眠気や睡眠休養感を手がかりに探っていく必要があります。朝の光を取り入れて日中は体を動かし、夜は暗く静かな環境で休むというメリハリも、季節に左右されにくい眠りに役立つでしょう。
生活習慣や寝室の環境を見直しても強い眠気が続き、日常生活に支障が出ている場合は医師に相談してください。冬の眠気を寒さだけのせいにせず、毎日続けられる眠りの習慣を1つずつ整えるところから始めてみましょう。
※22
