
よく眠れる食べ物・飲み物は?トリプトファンと快眠を呼ぶ選び方を解説
質のよい睡眠を得るには適度な運動や環境づくりが大切ですが、食べ物や飲み物も重要な要素であることをご存知でしょうか。
近年は、なかなか寝付けなかったり、途中で目が覚めてしまったりといった悩みを持つ方が増えている傾向です。
そのような方は、睡眠と向き合う食習慣や飲み物を知ることで、睡眠を意識した食べ方で解決できる可能性があります。
本記事では、質のよい睡眠につながる食品やその成分について、とるタイミングと併せて具体的に解説します。
日々の暮らしのなかで実践しやすい内容ですので、睡眠の質を食事の面から改善したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
食べ物や飲み物でよく眠れるようになる?

睡眠は疲れを癒し、活力を養ううえでなくてはならないものです。
質のよい眠りを得るために、枕を変えてみたり、ぬるめの湯舟に浸かったりといった方法を実践する方もいるでしょう。
しかし近年は、食べ物や飲み物も睡眠の質に影響を与える要素の一つであることが明らかになっています。
快眠に向けて食生活を見直したくても、どのようなものをとればよいのかわからず、二の足を踏んでいる方もいるのではないでしょうか。
この章では、睡眠によい影響を与える成分と実践しやすい摂取方法を解説します。
トリプトファンが日中にセロトニンへ変わり夜のメラトニンになる

トリプトファンとはたんぱく質を構成するアミノ酸の一種で、必須アミノ酸と呼ばれています。必須アミノ酸は体内で作ることができないため、食事での摂取が必要です。(※1)
トリプトファンは、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの材料となり、セロトニンは一定の時間が経過するとメラトニンという物質に変化します。
セロトニンは、脳神経を刺激するノルアドレナリンやドーパミンの働きを抑制し、精神を安定させる作用を持つのが特徴です。(※2)
一方、メラトニンは睡眠を促す神経伝達物質の一つで、脳の状態を覚醒モードから睡眠モードに切り替える役割を担います。(※3)
快眠を目指す方にとって、トリプトファンとメラトニンについての理解は欠かせないものといえるでしょう。
夕食1食を置き換えるだけから始める
快適な眠りを得るための食習慣を定着させるには、継続的な取り組みが大切です。効果を急ぐあまり、はじめから3食すべてを置き換えるのは精神的にも負担が生じ、早い段階で挫折してしまう可能性があります。
睡眠の質を上げる食べ物や飲み物の特徴をきちんと理解したうえで、まずは夕食1食から見直すなど、無理のない範囲から始めてみるのがおすすめです。
よく眠れる食べ物に多い成分

快適な眠りを助ける食品に含まれる成分は、トリプトファン以外にもいくつか存在します。なかでも、ここ数年で耳にする機会が増えたのがGABAと呼ばれる成分です。
これらの成分は、私たちの脳の働きに影響を与える物質として注目されています。
この章ではトリプトファンとGABAがそれぞれどのような食品に含まれるのか、各成分の特徴と合わせて整理していきます。
トリプトファンは大豆や乳製品に多く睡眠ホルモンの材料になる
まずはトリプトファンから見ていきましょう。トリプトファンを多く含む食品は以下のとおりです。
豆腐・納豆・味噌・しょうゆ
チーズ・牛乳・ヨーグルト
米
ゴマ・ピーナッツ・バナナ
肉・魚類
このなかでも、大豆由来の食品や乳製品、豆類に多く含まれているのが特徴です。(※4)
また、トリプトファンは肉類や魚類といった動物性たんぱく質にも含まれますが、動物性たんぱく質の成分である分岐鎖アミノ酸(BCAA)はトリプトファンの脳内への取り込みを妨げる作用があるといわれています。
つまり睡眠ホルモンであるメラトニンの生成を促進するには、植物性たんぱく質からトリプトファンをとるのが賢明というわけです。
GABAは発芽玄米やトマトに含まれ高ぶった気持ちを鎮める
GABAは正式にはγ-アミノ酪酸(Gamma Amino Butyric Acid)といい、天然アミノ酸の一種です。GABAが多く含まれる食品を以下に挙げます。
発芽玄米
トマト・なす・きゅうり・アスパラガス
メロン・みかん
キムチ・漬物
1950年代に発見されたGABAは研究が重ねられ、神経の興奮を抑制する抗ストレス物質として注目されるようになりました。(※5)
近年では、GABA含有と明記された菓子類や乳製品も増えている傾向です。
よく眠れる食べ物の選び方

快眠を助ける成分について解説しましたが、具体的にどのような食品をとれば熟眠感を得られるのかも気になるところです。
以前は一般的に朝食向きと認識されてきた食品が、実際は眠りをサポートする役目を果たすことが近年の研究でわかってきました。
どのような食品が快眠につながるのか、とるタイミングも含めて以下で紹介しましょう。
夕食に納豆や豆腐やヨーグルトを一品足す
いつもの夕飯メニューに、トリプトファンを多く含む納豆や豆腐、ヨーグルトを一品だけ追加してみましょう。
トリプトファンによってメラトニンの分泌が促進される可能性があるため、快適な睡眠が期待できます。ただし、トリプトファンが摂取後すぐにメラトニンに変化するわけではない点に注意が必要です。
また、脳と腸には相関関係があるのが特徴です。納豆やヨーグルトに含まれる成分が腸内環境を整えることで脳にもよい影響が生じ、自律神経が安定して睡眠の質が向上しやすいといわれています。(※6)
夜の間食はバナナや温かいスープにする
夜遅い時間に脂質などをとると、消化器官に負担がかかり快適な眠りが妨げられてしまいます。
そのため、夜の間食にはバナナや温かいスープなど、消化活動の負担になりにくいものを選ぶことがポイントです。
さらにバナナには、トリプトファンのほかに睡眠の質を高めるのに欠かせないビタミンB6とマグネシウムが含まれています。
カロリーが高めのため食べ過ぎに注意する必要はありますが、上手に取り入れれば睡眠習慣の改善が図れるでしょう。
よく眠れる飲み物の選び方

続いて、睡眠によい影響を与える飲み物についても解説します。
熟眠感を得やすい飲み物としてホットミルクがよく知られていますが、ほかにも白湯やハーブティーなどいくつか種類があるのが特徴です。
また快眠のためには飲み物の種類だけでなく、飲むタイミングにも注意する必要があります。以下で詳しく見ていきましょう。
寝る30分前にホットミルクや白湯を1杯飲む
私たちの身体は、深部体温が下がることで眠気を感じるといわれています。
就寝前のホットミルクや白湯が推奨される理由は、温かい飲み物を飲んで一時的に上昇した体温が、緩やかに下がる過程で眠気を得られるためです。(※7)
体温が変化する時間を考慮すると、眠りにつく約30分〜1時間前の摂取が適切といえます。
カモミールやルイボスなどカフェインゼロのハーブティーにする
カモミールやルイボスなどのハーブティーは、不眠や不安症状、また胃腸障害の改善が期待できるといわれています。
古代エジプトやギリシアなどでも重要な薬草として用いられていた記録があり、古くから心身の状態を整えるものとして重宝されてきました。
また、覚醒作用をもつカフェインが含まれていない点も、快眠を促す特徴の一つです。(※8)
睡眠を妨げる食べ物と飲み物

快適な眠りをサポートする食品や成分がある一方、睡眠を妨げるものがあるのも事実です。
特にカフェインが含まれている飲み物は、就寝直前に飲むと眠りにつきにくいケースがあるといわれています。
また脂質や糖質が多く含まれる食品も、就寝前には摂取を控えるのが賢明です。なぜ控えた方がよいのか、以下で詳しく解説します。
コーヒーや緑茶などカフェインは就寝4時間前まででやめる

コーヒーや緑茶は嗜好品として知られており、摂取が習慣化しているケースが少なくありません。
しかし、この2つにはカフェインが含まれているのが特徴です。前述したようにカフェインには覚醒作用があり、3時間程度作用が持続するといわれています。
また、カフェインには利尿作用もあるため、就寝前にとると尿意を感じ途中で目が覚めてしまう可能性があります。(※9)
心地よい眠りを確保するには、就寝4時間前にはカフェインの摂取を控えるのが賢明です。
寝る前の揚げ物やケーキなど脂質と糖質はやめる
就寝前に揚げ物など脂質の多いものやケーキといった糖質を含むものを食べると、消化機能への負担から脳や身体が休息モードに切り替わることができず、眠りが浅くなるといわれています。
また、血糖値が急激に上昇すると、自律神経の乱れを引き起こします。自律神経の乱れはメラトニンの分泌にも悪影響を与え、結果として睡眠の質の低下につながる仕組みです。
睡眠だけでなく胃腸にも不調をきたす可能性があるため、就寝前に脂質や糖質をとるのは避けた方がよいでしょう。
よく眠れる食べ物のとり方とタイミング

熟眠感を得るための食べ物のとり方や、とるタイミングについて把握しておくのも重要です。
快眠をサポートする代表的な成分であるトリプトファンは、摂取方法を工夫することでより効果が高まる可能性があるといわれています。
ただし、トリプトファンを多くとればその分熟眠感が増すというわけではありません。前述したように、摂取のタイミングや量に注意する必要があります。
この章では、快眠のためのトリプトファンの適切な摂取方法やタイミングについて整理します。
トリプトファンは朝にとる
睡眠の質を保つためには、トリプトファンを含んだ食品は就寝時間に近い夕食にとるのが適切と思われがちですが、実際は朝食にとる方が効果的であることが報告されています。
朝の摂取が推奨される理由として挙げられるのが、トリプトファンがメラトニンに変わるまでの所要時間です。
トリプトファンは体内に取り込まれた後、日中はセロトニンとして働き、いくつかの化学変化を経てメラトニンへ変化します。この変換の工程に15時間程度かかるため、就寝時間から逆算して朝の摂取が勧められているわけです。(※10)
就寝直前は消化に3時間かかる量を避けバナナ半分程度にする
一般的に、血糖値の上昇や消化器官への負担という理由から、就寝から3時間前は食事を控えるのがよいといわれています。(※11)
就寝直前は極力食事はとらないのが賢明ですが、摂取せざるをえない場合は消化時間を考慮して、睡眠に支障がない量に留めておくのが賢明です。
例えば、バナナはトリプトファンがセロトニンに変換する際に不可欠なビタミンB6や、筋肉を弛緩させリラックスを促すマグネシウムが含まれています。(※12)
睡眠を助ける成分が一括して含まれていることから、いわゆる自然の睡眠薬ともいわれていますが、糖質を多く含むため就寝前に食べる場合は半分程度を目安としましょう。
食べ物だけに頼らず整える生活習慣

冒頭で述べたように、快適な睡眠習慣を維持するには生活習慣や寝室環境にも配慮が求められます。
規則正しい生活を心がけるのはもちろん、寝室照明の選び方やベッドに入ってからのスマートフォンの操作時間などにも注意が必要です。
忙しさを理由に自律的な生活を諦めるのではなく、忙しいときこそ暮らし方を整えることでメリハリのついた毎日を過ごすことができ、質のよい睡眠の獲得にもつながります。
どのような生活習慣が質のよい睡眠につながるのか、具体的に見ていきましょう。
起床と就寝の時刻を毎日同じにそろえる
私たちの身体は、体内時計や概日リズム(サーカディアンリズム)によって睡眠と覚醒の周期リズムが保たれ、メラトニンの分泌もこの2つの周期に影響を受けているのが特徴です。
毎日の起床と就寝の時刻をそろえることでこの体内時計とサーカディアンリズムが正常に機能し、快適な睡眠を得ることができます。
就寝1時間前に照明を落としスマホを手放す

体内時計やサーカディアンリズムをコントロールする重要な要素が、日光やブルーライトといった光の照射です。
日光を浴びると体内周期がリセットされ、私たちの身体は休息モードから活動モードに切り替わります。同時に自律神経も副交感神経優位の状態から、交感神経優位の状態へ移る仕組みです。
スマートフォンやパソコンが発するブルーライトも、日光と同様覚醒を促す作用を持ち、交感神経を刺激してメラトニンの分泌を抑制することが報告されています。
脳が覚醒したままの状態がしばらく続くため、就寝直前までスマートフォンなどを操作すると寝付きづらくなる可能性があります。(※13)
睡眠を内側から支える食習慣

快眠を目指して毎日の運動を習慣化したり、寝室の照明を変えたりするのは、簡単にはできないケースがあるのも事実です。
しかし、バナナやホットミルクなどを毎日の食事に付け加えるといった一工夫は、それほど難しくないのではないでしょうか。
快眠につながる食習慣は、難しい調理法や高価な食材を用意しなくても習得できるのが特徴です。
ここでは、日常的に取り入れやすい快眠サポート食品やドリンクを紹介します。
納豆や味噌やお酢を毎日1品食べる
すでに解説したとおり、大豆などの植物性たんぱく質はトリプトファンを効率よく摂取できるのが特徴です。
納豆や味噌などの大豆由来の食品は、私たち日本人にとって馴染み深いものであり、日常的に取り入れやすいといえます。
また、お酢も快適な睡眠が望めるとして注目されている食品の一つです。お酢に含まれる酢酸は疲労回復や血糖値の上昇を穏やかにする働きがあるといわれています。
疲れや血糖値の上昇は自律神経のバランスを崩す要因であり、快適な睡眠を妨げるリスク因子です。
食べ物と飲み物を味方に眠りの質を高めよう

質のよい睡眠を得るには、生活習慣や睡眠環境だけでなく、食生活を見直すことが重要です。
睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンについての理解や、メラトニンの材料となるトリプトファンが豊富な食品を知ることで、快眠に向けた生活改善計画が具体的に立てやすくなります。
具体的な計画を立てるには、とるタイミングや量にも気を配ることが大切です。
さらに抗ストレス物質といわれるGABAや、抗酸化作用と血糖値の上昇を抑えるお酢を上手に組み合わせることで、快適な睡眠習慣が叶えられるでしょう。
この記事を参考に、まずは快眠サポートメニューへ1食置き換えることから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
- e-ヘルスネット「健康日本21アクション支援システム Webサイト」
- e-ヘルスネット「セロトニン」
- e-ヘルスネット「セロトニン」
- 文部科学省 食品成分データベース「食品成分データベース」「食品成分ランキング」
- 消費者庁「特定保健用食品について」
- 国立長寿医療研究センター「腸内フローラと健康」
- e-ヘルスネット「眠りのメカニズム」
- 厚生労働省 eJIM「よく眠れる食べ物・飲み物はの参考資料」
- 厚生労働省「8 参考資料3 報告書1」
- 「ぐっすり快眠」できていますか? ~睡眠不足解消で梅雨&暑い夏を乗り越えよう~ | 管理栄養士コラム | 静岡市・浜松市の人間ドック、健康診断
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- 文部科学省 食品成分データベース「食品成分データベース」「果実類/バナナ/生 - 01.一般成分表-無機質-ビタミン類」
- スマート・ライフ・プロジェクト「寝ても疲れが取れないなら要チェック!あなたの睡眠の質 大丈夫ですか?」
