
重要な栄養素のタンパク質とは?働きや必要な摂取量を解説
タンパク質は、人間の体に欠かせない三大栄養素のうちの一つといわれています。
しかし、「どのくらい摂ればよいのか」「どのような働きがあるのか」を正しく理解している方は、意外にも多くないのではないでしょうか?
本記事では、タンパク質の基本的な働きや1日に必要な摂取量、効率よく取り入れるポイントまでをわかりやすく解説します。
タンパク質の構成と働き

タンパク質は、炭水化物・脂質と並ぶ三大栄養素の一つです。
20種類のアミノ酸が約50個〜1,000個結びついた複雑な高分子化合物で、成分中に約16%の窒素を含んでいる特徴があります。タンパク質は生命活動にとって重要な役割を担っており、人間の身体を構成する以下のような組織や物質の材料になっています。
筋肉
臓器
皮膚
毛髪
体内で代謝を司る酵素
体の機能を正常に調節するホルモン
ウイルスや細菌などの病原体から身体を守る抗体
人間の身体の約6割は水分で構成されていますが、水分を除いた体の成分のうち、約50%がタンパク質です。
タンパク質は、人間が生きていくうえで欠かせない栄養素です。
タンパク質の1日に必要な摂取量

1日のタンパク質の摂取量は、年齢層や目的によって変わります。
厚生労働省によると、タンパク質の通常の摂取目安は18歳以上の男性で60g〜65g、女性で50gです。(※1)
ただし、生活習慣病の予防を目的とした場合、タンパク質の摂取目標量は、1日の摂取カロリーに対する割合で目安が定められています。
生活習慣病の予防を目的とした場合、各年齢ごとのタンパク質の摂取目標量は以下のとおりです。
18歳から49歳は13%から20%
50歳から64歳は14%から20%
65歳以上は15%から20%
1日の摂取カロリー目安は人それぞれの体格や活動量によって変わるため、生活習慣病の予防を目的としたタンパク質の摂取量も変動します。
また、高齢者の加齢に伴う心身機能の衰えの予防の観点から見た場合、割合ではなく体重1kgあたり1.2g前後の摂取が有効である可能性も報告されています。タンパク質の1日の摂取量は、年齢や生活習慣によって異なるため、自分のライフスタイルによって毎日の食事メニューを考えるとよいでしょう。
※1
タンパク質が不足すると現れやすい症状

タンパク質は全身の細胞や組織を作る重要な栄養素であるため、不足すると、さまざまな身体の不調を引き起こすことがあります。
ここからは、タンパク質が不足した際に見られやすい、代表的な症状を3つ見ていきましょう。
肌荒れや爪割れ
タンパク質は皮膚を構成する中心的な成分なので、不足すると新陳代謝が乱れて肌のハリや潤いが失われる要因になります。
また、爪も皮膚の一部が変化したものであるため、タンパク質が足りなくなると、少しの衝撃で割れやすくなることもあります。
肌や爪などの体の外側にある組織は、タンパク質不足の影響を受けやすい場所です。
肌荒れや爪割れが現れた場合は、意識してタンパク質を多めに摂取するとよいでしょう。
疲れやすさ

疲れやすさや身体のだるさも、タンパク質の不足が原因で引き起こされる不調です。
血液のなかで全身に酸素を運ぶ役割を持つヘモグロビンの材料は、主に鉄とタンパク質です。
タンパク質が不足すると、ヘモグロビンが十分に生成されず、体内の酸素の供給が滞ってしまいます。
その結果、少し動いただけで息切れがしたり、長時間寝ても疲労感に悩まされることになりかねません。
また、タンパク質が不足すると筋力も低下し、生命を維持するための基礎代謝が低下します。筋力の低下により、日常的な階段の上り下りや買い物などのちょっとした動作でも体力を消耗し、疲れやすい体質へと変わってしまいます。
タンパク質の不足は、体内の酸素不足と筋力低下を同時に招くため、慢性的な疲れやすさや身体のだるさの一因です。
むくみ
顔や身体のむくみも、タンパク質が不足しているサインの一つです。
血液中のアルブミンは、血管のなかの水分量を調整する役割を担っています。タンパク質が不足して血液中のアルブミンの濃度が低下すると、水分を血管のなかに引き留めておくことができなくなってしまいます。
行き場を失った水分が血管の外にある細胞の隙間へと漏れ出して溜まると、むくみとなって身体の表面に現れる仕組みです。
むくみを予防して、すっきりとした生活を送るためにも、タンパク質を補給して血液中のアルブミンの濃度を保つことが大切です。
タンパク質が睡眠に与える影響

タンパク質は、身体を構成する組織や物質の材料になっているだけではありません。
タンパク質の不足は、質のよい睡眠 睡眠の質にも深く関わっています。
ここからは、タンパク質が睡眠にどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。
トリプトファンが睡眠に関わる仕組み
睡眠の質に影響するアミノ酸は、トリプトファンです。
トリプトファンは、日中に脳内で神経伝達物質であるセロトニンへと変化します。(※2)セロトニンは、夜になると、自然な眠気を促す物質メラトニンの材料になります。心地よい眠りを迎えるためには、セロトニンの材料となるトリプトファンが必要です。
しかし、トリプトファンは、人間の体内で作り出せない必須アミノ酸の一つなので、毎日の食事から継続して摂取しなければなりません。
深く質のよい睡眠 良質な眠りを求めるのであれば、トリプトファンが多く含まれる乳製品や、豚の赤身肉などの食材を日々の食事に取り入れるとよいでしょう。
朝にタンパク質を摂取するメリット
朝にタンパク質を摂取するメリットは、1日に必要なタンパク質の量を早い段階で確保でき、昼食や夕食への偏りを防げることです。
タンパク質を筋肉に合成する働きを最大化しやすい、一回の摂取量の目安は、およそ20g〜40g程度であるとされています。
そのため、一度にまとめてタンパク質を摂取しても、体内組織の材料に使われずに体外に排出されてしまう可能性が否定できません。
朝食でタンパク質を摂らなかった場合、以降の食事でまとめて補うことになり、せっかく摂取したタンパク質を身体づくりに有効活用できないことがあります。
また、朝食を摂ること自体が、朝の光とあわせて体内時計のリズムを整えるうえで重要です。
朝にタンパク質を摂取すれば、1日のリズムを整えたうえで、タンパク質を身体づくりに無駄なく活用できるメリットがあります。
タンパク質を多く含む食品

タンパク質を含む食品は、動物性タンパク質と植物性タンパク質の2種類に分けられます。
ここからは、動物性タンパク質と植物性タンパク質の特徴やメリット、代表的な食材を見ていきましょう。
動物性タンパク質
動物性タンパク質は、主に肉類や魚介類、乳製品に多く含まれています。
人間の体内では生成できない9種類の必須アミノ酸がバランスよく含まれているのが特徴です。
植物性タンパク質に比べて、動物性タンパク質は消化・吸収されやすく、効率的に身体の組織の材料になります。
ただし、部位や食品によっては脂質も多く含まれるため、カロリーや飽和脂肪酸の摂りすぎには注意が必要です。
動物性タンパク質を多く含む代表的な食材は、以下のとおりです。
※タンパク質量は「日本食品標準成分表(八訂)」のデータをもとにした数値です。(※3)
肉類や魚介類には、タンパク質の代謝を助けてくれるビタミンやミネラルも豊富に含まれています。
タンパク質以外の栄養を同時に摂取できる意味でも、肉類や魚介類は栄養補給として優れた食材です。
植物性タンパク質
植物性タンパク質は、主に大豆製品や穀類などに含まれています。
動物性タンパク質と比較して脂肪分が少ないため、カロリーを抑えながらタンパク質を摂取できるのが特徴です。
しかし、植物性タンパク質を穀類だけで補おうとすると、摂取できるアミノ酸が特定のものに偏ってしまいます。
穀類だけでなく、豆類や動物性タンパク質の食材と組み合わせて摂取し、栄養が偏らないようにしましょう。
植物性タンパク質を多く含む代表的な食材は以下のとおりです。
※タンパク質量は「日本食品標準成分表(八訂)」のデータをもとにした数値です。(※3)
植物性タンパク質の食材には食物繊維が豊富に含まれているため、腸内環境を整えながらタンパク質を摂取できます。
※3
タンパク質と一緒に摂取すると良い栄養素

タンパク質は単体で摂取するよりも、特定の栄養素と組み合わせて摂取すると、体内での代謝や利用の効率が高まります。
ここからは、タンパク質と一緒に摂取したい3つの重要な栄養素をご紹介します。
炭水化物
炭水化物は、身体を動かすためのエネルギー源となる栄養素です。
炭水化物が不足している状態でタンパク質を摂取すると、タンパク質が炭水化物に代わるエネルギー源として消費され、本来の役割である体組織の材料になれません。
炭水化物とタンパク質を一緒に摂取して身体のエネルギー源を確保すれば、タンパク質は本来の役割である、身体の組織作りの材料として機能します。
特に運動後に炭水化物を摂ると、血糖値が上昇してインスリンの分泌が促され、アミノ酸の体内への吸収を後押ししてくれます。
ビタミンD
ビタミンDは骨の健康維持に関わる栄養素で、カルシウムの吸収にも関係します。
カルシウムは、骨や歯の材料になるだけでなく、筋肉の収縮にも関与しています。
筋肉の材料となるタンパク質を摂取しても、骨がもろいと健やかな体を維持できません。
タンパク質とビタミンDを一緒に補給すれば、体の組織を作る材料を補うと同時に、骨を強化して筋肉が正常に動く仕組みを維持できます。
鮭やサンマなどには、タンパク質とビタミンDの両方が豊富に含まれています。
一つの食材で二つの栄養素を効率よく補えるため、鮭やサンマなどは日々の献立へ積極的に取り入れるとよいでしょう。
ビタミンB6
ビタミンB6は、体内でアミノ酸を分解したり、新たな組織へと組み立てたりする代謝に深く関わる栄養素です。
タンパク質の摂取量に対してビタミンB6が不足すると、アミノ酸の分解や合成が進まず、タンパク質を体内で十分に利用できません。
さらに、ビタミンB6は皮膚・粘膜・赤血球に関わるため、不足すると肌荒れ・口内炎・貧血などの体調不良につながります。
日々の健康を維持するためにも、レバーやカツオなどのタンパク質とビタミンB6の両方が含まれる食材を、主菜または副菜として食べるとよいでしょう。
タンパク質を上手に摂取するコツ

タンパク質は、ただ闇雲に量を摂取すればよいわけではありません。
ここからは、毎日の食事で効率よく、そして無理なく摂取するためのコツを3つご紹介します。
1日3回の食事に主菜を入れる
タンパク質の摂取は、1日3回の食事に均等に、適切な量に分けることが有利である可能性が指摘されています。
毎回の食事に、タンパク質を多く含む食品の表で紹介したような肉・魚・乳製品など、どれか一つだけでも取り入れるようにしましょう。
特に、朝食や昼食は、食パンや麺類だけで済ませてしまいがちです。
手軽に用意できる豆腐やゆで卵などを一品添えるだけでも、不足しがちな時間帯のタンパク質を補えます。
さまざまな食材から摂取する
タンパク質を摂る際は、さまざまな食材から摂取しましょう。
動物性タンパク質ばかり摂取していると脂質が過剰になりやすく、植物性タンパク質ばかり摂取しているとアミノ酸の割合が偏ってしまいます。
例えば、焼き魚に豆腐を組み合わせると、動物性と植物性のタンパク質をバランスよく摂取できます。
また、ご飯と納豆は両方とも植物性タンパク質ですが、摂取できるアミノ酸を補完し合えるので、定番の組み合わせです。タンパク質の代謝に必要なビタミンやミネラルも一緒に摂取するためにも、さまざまな食材からバランスよくタンパク質の摂取を心がけましょう。
手軽に摂りやすいものを選ぶ
タンパク質の摂取を継続するためには、無理なく続けられる工夫が必要です。
以下のような調理の手間がなくそのまま食べられる食品は、家に常備しておくとよいでしょう。
納豆
豆腐
卵
チーズ
魚の缶詰
一度にたくさん食べられない方は、牛乳や豆乳などを食事と一緒に飲むだけでもタンパク質を摂取できます。高齢者など噛む力が弱い方の場合は、ひき肉や叩いた魚など、軟らかく噛む力が弱くても食べられる食材を選びましょう。
タンパク質を摂取する際の注意点

タンパク質は、ただ多く摂ればよいわけではありません。
摂取する際には、いくつか気をつけておきたいポイントがあります。
ここからは、タンパク質を摂取する際の注意点を解説します。
タンパク質の摂りすぎに注意する
健康な方であれば、タンパク質の上限量は明確に定められていません。
ただし、摂取カロリーのなかでタンパク質の比率だけを上げると、炭水化物・脂質・食物繊維などの栄養素の摂取量も落ちてバランスが崩れてしまいます。
健康的に身体づくりを行うには、1日のカロリー総量に対してタンパク質の割合が20%を超えないことを一つの目安としましょう。
腎機能が低下している場合は医師に相談する
腎機能が低下している状態でタンパク質を過剰に摂取すると、腎臓への負担が増して本来の機能を著しく低下させてしまいます。
腎機能が低下している方は、病期によって適切なタンパク質量が異なるため、医師や管理栄養士の指示にしたがって量を調整する必要があります。
すでに医師の診断を受けている方はもちろん、健康診断などで腎機能の数値が保健指導の対象と指摘された方も、タンパク質の摂取量の指示を主治医に仰ぐとよいでしょう。
タンパク質を上手に摂取して健康な身体を目指そう

タンパク質は、人間の身体を構成するほとんどの組織や物質の材料になっている三大栄養素の一つです。
タンパク質が不足すると、肌荒れ・むくみ・睡眠の質の低下などにつながるため、健康を保つうえでも欠かせない栄養素です。
1日のタンパク質の摂取目安は、人それぞれなので、自分の年齢や活動量に合った量を1日3回にわけて摂取するように心がけましょう。
参考文献
- 厚生労働省「「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書」
- e-ヘルスネット「セロトニン」
- e-ヘルスネット「健康日本21アクション支援システム Webサイト」
- 厚生労働省「重要な栄養素のタンパク質の参考資料」
- 厚生労働省「重要な栄養素のタンパク質の参考資料」
- 重要な栄養素のタンパク質の参考資料
- 厚生労働省「重要な栄養素のタンパク質の参考資料」
- e-ヘルスネット「健康日本21アクション支援システム Webサイト」
- 健康長寿ネット「健康長寿ネット」
- 厚生労働省「「血液製剤の使用指針」(改定版)」
- e-ヘルスネット「セロトニン」
- Hymn – Co-evolution of human and technology
