
ストレスで寝不足が続くのはなぜ?悪循環を断つ快眠習慣と食事を解説
ストレスが続いたとき、夜になかなか寝つけず困った経験はありませんか。睡眠が足りないと日中の眠気や疲労、集中力の低下を招くだけでなく、心疾患や肥満、脳血管障害のリスクを高める可能性があります。(※1)
2019年の調査によると、睡眠時間が6時間未満の成人の割合は男性37.5%、女性40.6%と報告されており、多くの方が睡眠不足の傾向にあるようです。
ストレスと睡眠は密接に関係しており、ストレスにより産生されるコルチゾールや自律神経が関係し、睡眠に影響することがあります。(※2)
ですが、生活習慣や食生活を見直すことによって、ストレスと睡眠の悪循環の軽減が期待できます。無理なく日常に取り入れて、睡眠の質の向上を目指しましょう。
ストレスで寝不足が続くのはなぜ?基本の仕組み

ストレスは、ホルモンの一種であるコルチゾールと交感神経が大きく関わっているといわれています。コルチゾールと交感神経がどのようにストレスと睡眠に影響するのか、仕組みを解説していきます。
コルチゾールが増えて寝つきを妨げる
人はストレスを感じると、身体の生体保持機能を活性化させます。このときに産生されるホルモンがコルチゾールです。コルチゾールは血圧や心拍数を上昇させたり、ストレス刺激を制御したりする働きがあります。適度なストレスであればコルチゾールによって刺激が加わりすぎないようにコントロールされますが、過剰なストレスによりコルチゾールの分泌が続くと、ストレスへの適応力が落ちて自律神経のバランスが乱れてしまいます。自律神経の乱れによって体内時計のリズムが崩れることが、寝つきが悪くなる原因の一つです。(※3)
交感神経が優位になり脳が興奮して寝つけなくなる
人は朝に交感神経が優位になることで目が覚め、夜に副交感神経へと切り替わり自然と眠くなります。ですが、過剰なストレスや生活習慣により自律神経が乱れることで、夜になっても副交感神経に切り替わらず交感神経が優位な状態が続いてしまうことがあります。そうすると脳の興奮状態が続きなかなかリラックスできず、寝つきが悪くなってしまいます。(※4)
ストレスと寝不足の悪循環

眠れないとストレスが増すと実感している方は多いのではないでしょうか。ストレスと寝不足が蓄積すると、さまざまな不調が身体に現れます。そうするとさらにストレスが溜まって睡眠不足を悪化させるというストレスと寝不足の悪循環に陥ってしまう可能性があります。
では、悪循環に陥っているときはどのような症状が出てくるのでしょうか。主に2つの症状があげられます。
寝不足が続くと些細なことでイライラしやすくなる
寝不足が慢性化して生体防御機能が弱まると身体はストレスに対応するために多くのエネルギーを消耗するため、疲労感が増大してしまいます。すると身体はストレスに対応できず些細なことに過剰に反応してイライラしてしまい、よりストレスが溜まりやすくなります。(※5)
高まったストレスが夜の寝つきをさらに悪くする
寝不足によってストレスが高まると交感神経が優位な状態が続き、さらに寝つきが悪くなってしまう傾向があります。そうすると脳が休まらず、日中の体調やメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、ストレスと寝不足の悪循環がより深刻になっていきます。
ストレスによる寝不足のサイン

では、ストレスによる寝不足はどのような症状が現れるのでしょうか。寝不足の症状は主に入眠困難と中途覚醒の2つがあげられます。自分自身の寝不足がストレスによるものなのか、確認してみてください。
布団に入っても30分以上寝つけない
健康な人が寝つくまでの平均時間は10〜20分といわれています。ですが、寝つきにくさの原因はさまざまです。状態が続く場合や日中生活に支障がある場合は、医療機関に相談してください。このような状態は入眠困難と呼ばれることがあります。(※6)
ストレスで脳が興奮していると、なかなか寝つくことができません。短期間でも強い苦痛や日中の支障がある場合は、医療機関に相談してください。特に、週3日以上、かつ長期間にわたって入眠できない日が続くようなら対策が必要です。(※7)
夜中に何度も目が覚めて眠りが浅い
睡眠中は、レム睡眠とノンレム睡眠が90〜120分の周期で繰り返されています。睡眠の質を高めるためには、レム睡眠とノンレム睡眠のリズムが整っていることが大切です。
レム睡眠中は、身体は休んでいますが脳活動は活発な傾向にあるため、眠りが浅い状態となります。反対にノンレム睡眠中は脳を休めているため、眠りが深い状態にあります。
ストレスにより交感神経が活発な状態にあると、脳が休まらずノンレム睡眠が少なくなり、レム睡眠の時間が増える傾向があります。そうすると眠りが浅くなり、夜中に何度も目が覚めてしまう中途覚醒という症状が現れます。(※8)夜間の覚醒が繰り返され、日中の生活に支障がある場合は、医療機関などの専門家に相談しましょう。
悪循環を断つ夜の快眠習慣

睡眠の質を上げるには、夜の過ごし方がとても重要です。少し生活習慣の意識を変えるだけで、寝つきがグッとよくなる可能性があります。寝る前にリラックスして副交感神経を優位にすることが、ストレスと睡眠不足の悪循環を断つ近道となります。
就寝の90分前に入浴して体温を上げる

人は深部体温と呼ばれる脳や臓器などの内部の温度が低下し始めると、眠気を感じやすくなります。就寝前の入浴によって深部体温を上昇させ、その後放熱して深部体温が下がるメカニズムを利用することで寝つきがよくなる効果が期待できます。入浴して身体の火照りが引くまでにはある程度時間がかかるといわれているため、就寝直前を避けてに入浴するのがポイントです。(※9)
また、お湯の温度が高すぎると交感神経が刺激されて脳が興奮しすぎてしまうので、40度程度がよいでしょう。湯船にゆっくりつかることで副交感神経が優位になり、心身の緊張がほぐれてリラックスできることもメリットの1つです。(※10)
シャワーですませていた方も、入浴する場合は、体調に合わせて無理のない時間にしてください。
毎日同じ時刻に布団に入る
人は体内時計によって睡眠と覚醒を調整しています。夜更かしは体内時計を乱して良質な睡眠を妨げてしまうため、毎日同じ時刻に布団に入ることを心がけましょう。
午後の眠気を解消するのに昼寝は効果的ですが、30分以内、午後3時までにとるようにしてください。長時間の昼寝は体内時計を乱してしまうので、注意が必要です。
週末の夜更かしや休日の寝坊はなるべく避け、規則正しい生活を送り睡眠と覚醒のリズムを整えることが、睡眠の質の向上につながります。(※11)
悪循環を断つ日中の過ごし方

睡眠は夜だけではなく、日中の過ごし方も重要です。日光を浴びて活動することで体内時計が調整され、夜に自然な眠りにつきやすくなる傾向があります。夜の過ごし方を見直した方は、ぜひ日中の習慣も改善してみてください。
起床後に15分ほど朝日を浴びる
朝日をしっかり浴びることで体内時計がリセットされるため、朝起きたらカーテンを開けて15分ほど光を浴びてみてください。起床後に明るい光を浴びることは、体内時計を整える生活習慣の一つとされています。ただし、メラトニンの分泌や睡眠への影響には個人差があります。
一方、夕方から夜にかけて浴びた光は体内時計を遅らせてしまいます。特に、寝る直前にスマートフォンやテレビなどの強い光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制されて入眠が妨げられる可能性があるので、なるべく避けるようにしましょう。(※12)
昼休みに10分歩いて気分を発散する

適度な運動はストレス発散になるだけではなく、睡眠の質を高める効果も期待できます。運動する時間がないという方は、昼休みに10分歩くことから取り入れてみてください。少し息があがるくらいの早足で歩くとより効果的です。軽い運動は気分転換や健康維持に役立つことがあります。なお、セロトニンの分泌やストレスへの影響には個人差があります。(※13)
10分のウォーキングに慣れてきたら、1駅分歩いたり駅では階段を使ったりして歩数を増やしてみてください。生活に無理なく取り入れることが、継続のカギとなります。
ストレスと寝不足にいい食事

食事の内容は、ストレスと寝不足に影響を与えるといわれています。ストレスと睡眠に関係するホルモンは、食事に含まれる栄養素から合成されるためです。取り入れた方がよい食品がある一方で注意が必要な食品もあるので、それぞれ解説していきます。
納豆やバナナでトリプトファンをとる
睡眠を促すホルモンであるメラトニンは、トリプトファンから作られます。体内に入ったトリプトファンが精神安定を促すセロトニンへ変化し、夜になるとセロトニンがメラトニンへ合成されます。(※14)トリプトファンはタンパク質を合成するアミノ酸の一種で、体内で合成できないため食べ物から摂取することが大切です。納豆やバナナ、魚介類に多く含まれるので、意識して食事に取り入れてみてください。(※15)
トリプトファンは体内でセロトニンやメラトニンの合成に関係します。ただし、特定食品の摂取だけで睡眠改善が保証されるものではないため注意が必要です。
就寝前のコーヒーやアルコールを控える
嗜好品のなかには、摂取するタイミングを間違えると睡眠に悪影響を与えるものがあります。注意が必要な嗜好品の1つに、コーヒーがあげられます。コーヒーに含まれるカフェインは覚醒作用があるため、寝る前に飲むと寝つきが悪くなったり夜中に頻繁に目が覚めるようになったりして、睡眠の質が下がることがあります。また、アルコールにも注意が必要です。アルコールを飲んで寝つきがよくなると感じても、時間が経つと徐々に眠りの質が悪化し、夜中に目が覚める回数が多くなるという報告があります。
睡眠の質を向上させるために、寝る直前のコーヒーやアルコールは控えるようにしましょう。(※16)
ストレスをためない考え方の工夫

そもそもストレスをためないためには、どうすればよいのでしょうか。ストレスを感じた後の考え方や行動を少し変えることで、気持ちが軽くなることがあります。ストレスと上手に付き合う方法を、日々の生活のなかで意識していくことが大切です。
気がかりを紙に書き出して頭を整理する
悩みを抱えて考えがまとまらないときは、紙に書き出してみてください。頭が整理されて問題がクリアになり、悩みを客観的にみることができるでしょう。そうすることで解決の糸口がみつかったり、新たな考え方が生まれてきたりするかもしれません。
紙に書くのが面倒であれば、スマートフォンのメモ機能を使ってもかまいません。大切なのは一人で考え込まずにアウトプットしてみることです。人に見せるものではないので、ありのままの自分の気持ちを出してみてください。(※17)
悩みを家族や友人に話して抱え込まない
悩みや困ったことがあるときは、誰かに話を聞いてもらうだけでも気持ちが軽くなることがあります。また、他人の意見を聞くことが問題解決のきっかけになることもあるでしょう。家族や友人など、身近な人と気軽に相談できる関係性を日頃から築いておくことが大切です。
一方で、身近な人には話しづらい悩みや困りごとがあるときは、早めに専門家に相談するようにしましょう。医師や自治体の窓口はもちろん、厚生労働省のWebサイトではチャットや電話で相談できるツールを提供しています。(※18)
睡眠の質を内側から整える習慣

食事で内側から睡眠の質を整えることはとても重要です。睡眠によい影響を与えてくれる食べ物は身近にたくさんあります。毎日続けられる方法でケアをしていくことが、睡眠によい影響を与えてくれるはずです。
発酵食品やお酢を毎日の食事に取り入れる
発酵食品とは微生物によって食べ物が分解されて、栄養価が向上したり味がよくなったりと有益に変化した食品のことです。代表的な発酵食品にはお酢や納豆、ヨーグルトがあげられます。
発酵食品は腸内環境を整えて便秘を改善するだけではなく、腸と脳を介して入眠や睡眠の維持によい影響を与えるという報告があります。(※19)
発酵食品のなかでも、お酢を摂取することによってストレス負荷が緩和したとする研究報告もあります。(※20)
酢の物や和え物など、料理に取り入れる形で日々の食事に加えてみるとよいでしょう。
就寝前は温かい一杯で体を落ち着ける

温かい飲み物を飲むことで身体の深部体温が上がり、その後体温が下がることでスムーズに入眠できます。飲料を選ぶ際は、カフェイン量や糖分などの表示も確認してください。しかし、カフェインが含まれる緑茶や紅茶は入眠を妨げるので、避けるようにしてください。(※21)
乳製品は睡眠ホルモンであるメラトニンの原料となるトリプトファンを多く含んでいるため、ホットミルクやホットココアはとてもおすすめです。(※22)
悪循環を断ち快眠とストレスケアを両立しよう

ストレスと睡眠の悪循環を抜け出すためには、生活習慣や食生活の改善が欠かせません。しかし、一度に改善しようとするとよりストレスがかかってしまうことがあります。まずは夜の過ごし方から少しずつ見直してみることをおすすめします。
あわせて、食事の内容を見直すのも効果的です。
トリプトファンを含む食品や発酵食品など、睡眠に関わる栄養をバランスよく取り入れることを意識してみましょう。
少しずつ習慣を改善していくことで、きっと睡眠の質は向上するはずです。自分に合う方法を見つけて、無理なく続けてみてください。
執筆時参考文献
参考文献
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- J-STAGE「ストレスと疲労のバイオマーカー」
- e-ヘルスネット「健康日本21アクション支援システム Webサイト」
- 睡眠不足は危険サイン⁉質の良い睡眠を得るためのストレス管理法 - 岩手県洋野町(ひろのちょう)公式地域情報ポータルサイト
- J-STAGE「疲労とストレス(<特集>疲労とストレス)」
- 睡眠障害
- e-ヘルスネット「不眠症」
- e-ヘルスネット「眠りのメカニズム」
- e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
- 和泉大学リポジトリ
- J-STAGE「生体リズムの乱れを調整する3要素(光,食事,メラトニン)」
- 厚生労働省「今の気持ちを書いてみる|こころと体のセルフケア|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~」
- 厚生労働省「その他の相談先|困った時の相談方法・窓口|まもろうよ こころ」
- 【摂南大学】腸内環境を整えるだけではなく美容をサポートする働きに期待
- J-STAGE「ストレスで寝不足が続くのはなぜに関する論文」
