
ストレス耐性とは?高い人と低い人の特徴、高める方法も解説
周職場で周囲と同じ環境にいても、自分だけが強い負担を感じてしまうという場面は決して少なくないと思います。そうした経験が重なるほど、ストレス耐性は生まれ持った性格で決まってしまうものだと考えてしまいがちです。
厚生労働省の資料では、ストレスへの反応が物事の捉え方や対処の仕方、周囲の支えによって変わると整理されています。(※1)性格そのものを変えようとしなくても、対処の引き出しを増やしていけば負担の感じ方が変わることもあるでしょう。
本記事では、ストレス耐性の意味と関係する3つの要素をはじめ、対処しやすい方の傾向や抱え込みやすい状況を解説します。セルフチェックの方法や対処力の高め方も取り上げますので、自分に適した向き合い方を探す参考にしてください。
※1
ストレス耐性とは

ストレス耐性は負担に耐える力そのものを指す言葉として使われがちですが、その中身にはもう少し幅があります。厚生労働省のこころの耳では、ストレスがストレス要因・反応・耐性の3つで構成され、耐性は要因を押し戻す抵抗力だと解説されています。(※2)
押し戻す力の中身は1つに限られず、物事の受け止め方や対処の手段、周囲との関係の3つが関わる要素です。ここでは、ストレス耐性という言葉が実際に指している範囲について、2つの角度から整理していきましょう。
※2
ストレスへの感じ方や対処には個人差がある
職場で同じ部署にいて同じ出来事に直面したとしても、強い負担を感じ取る方とそれほど気にならない方とに自然と分かれます。厚生労働省の資料では、ストレス反応が仕事の負担だけで決まるものではなく、仕事外の要因・個人要因・周囲の支えによって修飾されると整理されています。(※3)
個人要因に含まれるのは性格や価値観、考え方などで、同じ環境に置かれても反応の出方に差が生まれる理由です。感じ方に個人差が出るのだと理解できていれば、うまく対処できない自分を必要以上に責めずに済ませられるでしょう。
※3
ストレス耐性は生まれつきだけで決まるものではない
耐性が生まれつきの資質で固定されていると考えてしまうと、これから変えられる余地がないように思えてきます。同資料が示す職業性ストレスモデルでは、ストレス反応に影響する要素として、個人要因のほかに適切な対処行動と周囲のサポートが挙げられています。(※4)
このうち対処行動は後から身に付けられる領域であり、周囲の支えについても環境を整えることで増やせる部分です。性格そのものを作り替えようとするのではなく、対処の選択肢と周囲の支えを増やす方向で考えたほうが取り組みやすくなるでしょう。
※4
ストレス耐性に関係する主な要素

ストレス耐性を漠然とした強さとして捉えてしまうと、どこから手をつければよいのかわからなくなってしまいます。厚生労働省が示す職業性ストレスモデルでは、個人要因と適切な対処行動、周囲のサポートが要素として整理されています。(※5)
この3つはいずれも優劣を競うものではなく、置かれた状況に応じて組み合わせながら使っていく性質の要素です。ここでは、ストレス耐性に関係している主な要素を3つに分けたうえで、それぞれ順番に確認していきましょう。
※5
ストレスをどのように捉えるか
同じ業務量であっても、成長の機会と受け止めるか、手に負えない負担と受け止めるかで反応が変わるのは自然なことです。同資料ではストレス学説を唱えたハンス・セリエの言葉が紹介され、適度なストレスは心を引き締めて仕事や勉強の能率を上げると解説されています。
一方で、その興奮や緊張の度合いが過剰になってしまうと、心や身体のほうが適応しきれなくなるとも述べられています。(※6)ここで大切になるのは、自分が今どの程度の負担を抱えているのかを冷静に見積もり、超えそうなときに手を打つ判断です。
※6
自分に合った対処法を持っているか

負担を感じたときに取れる行動をいくつ持っているかどうかも、ストレス反応の大きさに深く関わってきます。先に挙げた職業性ストレスモデルでも、ストレス反応を軽くする要素として適切な対処行動が示されています。(※7)
身体を動かして切り替える方もいれば、誰かと話して気持ちを整理する方もいて、行動の中身はさまざまです。重要になるのは手段の種類そのものではなく、負担がかかった場面ですぐに取り出せる状態にあるかどうかです。
引き出しが1つしかない場合、その方法を使えない場面に当たったときに行き詰まりやすくなってしまうでしょう。
※7
周囲からサポートを得られるか
職場でも家庭でも、周囲の方との関係は負担の受け止め方を大きく左右する要素として位置づけられています。同じモデルのなかでは上司や同僚、家族や友人からのサポートが緩衝要因にあたるとされ、その有無がストレス反応の軽減に影響すると解説されています。(※8)
周囲からの支えというものは、改まった相談の場を設けたときや、困ってから頼んだときにだけ生まれるわけではありません。日頃の挨拶や短い雑談を積み重ねておくことこそが、いざというときに気軽に声をかけやすい関係づくりにつながっていきます。
※8
ストレスに対処しやすい人にみられる傾向

ストレスへの対処がうまい方を見ていると、生まれつき特別な精神力を備えているように思えるかもしれません。厚生労働省の資料が挙げているのは、過剰な負担に早く気付くことと自分に適した対処法を実践することの2つです。(※9)
どちらも持って生まれた資質などではなく、日々の行動を積み重ねることで少しずつ身に付けていける習慣です。ここでは、ストレスに対処しやすい方にみられる代表的な傾向について、2つに分けながら見ていきましょう。
※9
気持ちを切り替える方法を持っている
短い時間で気持ちを切り替えられる手段の1つとして、同じ資料では次のストレッチングが紹介されています。器具も場所も必要とせず手軽に行えるうえに、デスクに座ったままでもすぐ試せるのが次の3つの動作になります。
はずみをつけず、呼吸も止めないまま10〜30秒ほど伸ばし続けるのが、3つに共通しているポイントです。(※10)
※10
必要なときに周囲へ相談できる

自分が抱えている内容をきちんと言葉にできる方は、問題が大きくなる前の段階で手を打てるようになります。厚生労働省が定義するセルフケアには、ストレスへの気付きと対処に加えて自発的な健康相談までが含まれます。(※11)
この整理に従うなら、相談は決して弱さの表れではなく、セルフケアを構成する行動の1つという位置づけです。相談する相手は職場の上司や同僚に限らず、家族や友人、産業医や保健師などの専門家まで幅広く含まれます。
誰に何を伝えるのかを普段から考えておけば、いざ必要な場面になったときにも切り出しやすくなるでしょう。
※11
ストレスを抱え込みやすい状況

ストレスをため込みやすいかどうかは、性格だけでなく、そのとき置かれている環境にも左右される部分です。厚生労働省の資料では、仕事の質・量の変化・役割や地位の変化・人間関係のトラブルなどがストレス要因として挙げられています。(※12)
職場で置かれている環境と自分自身の考え方が重なったとき、負担はいっそう抜けにくくなっていく傾向があります。ここでは、ストレスを抱え込みやすくなってしまう代表的な2つの状況について、順番に取り上げていきましょう。
※12
完璧を求め過ぎている
仕事も家事もすべて高い水準で仕上げようとすると、終わりの見えない負担を自分の手で作り出してしまいます。職業性ストレスモデルで要因として挙げられているのは、仕事の負担量や質に加えた仕事のコントロール度です。(※13)
自分で調整できる余地が小さいほど、抱えている仕事量が同じであっても負担は重く感じられやすくなる傾向があります。求める水準を自分自身の裁量で下げられる場面であれば、意図的にどこかで線を引く判断も役に立つでしょう。
優先順位をつけて手放してよい部分を決めておけば、自分で調整できる範囲は少しずつ広がっていくでしょう。
※13
周囲を優先して自分の休息を後回しにしている
職場で頼まれた仕事を断らずに引き受け続けていると、先に削られていくのはたいてい自分の休息の時間です。厚生労働省の睡眠ガイド2023では、睡眠時間の短縮と関連が強い要素として勤務時間の長さが挙げられています。
同資料では、労働時間が9時間以上の男性は睡眠が6時間未満になるリスクが2.76倍と報告されています。(※14)職場への配慮と自分自身の休息は、どちらか一方だけを選ばなければならない関係にあるものではありません。
引き受ける量を自分である程度は調整していく視点も、ストレスへの対処の1つとして持っておきたいところです。
※14
ストレスを感じたときの対処法

強い負担を感じている場面では、原因を根本から解決しようとしても、それなりに時間がかかってしまいます。厚生労働省の資料では、過剰な負担がかかっていることに早く気付くことと、自分に適した対処法を実践することが大切だと示されています。(※15)
まずはその場で負担を軽くする手立てをいくつか持っておくことが、落ち着いて次の判断へ進むための土台です。ここでは、強い負担を感じた直後にその場ですぐ試せる対処法について、2つに分けて押さえていきましょう。
※15
ストレスの原因から一時的に距離をとる
負担の中心に居続けてしまうと、同じ考えが頭のなかを何度も回ってしまうような状態になりやすくなります。厚生労働省の睡眠ガイド2023では、寝つけないときは寝床を離れ、静かで暗めの場所で眠気が訪れるまで過ごす方法が示されています。(※16)
いったん場所を変えるというこの考え方自体は、日中に感じた負担に対しても、そのまま応用できる発想です。席を立って別の場所へ移る、あるいは短い時間だけ別の作業に切り替えるといった行動でも十分に構いません。
物理的に離れる時間をほんの数分でも挟んでおくと、戻ってきたときの見え方が変わってくることもあります。
※16
休息や気分転換など自分に合った方法を試す
厚生労働省の睡眠ガイド2023が就寝前にリラックスを得る方法として挙げているのは、次の4つになります。
腹式呼吸:お腹をふくらませながら、ゆっくり息を吸って吐く
筋弛緩法:肩や手にいったん力を入れてから、一気にゆるめる
瞑想法や静かに行うヨガ:呼吸と身体の感覚に意識を向ける
音楽やアロマ:自分が落ち着くと感じる音や香りを取り入れる
ただし同じページでは、すべての方に効果が保証された方法はないとも注意しているため、いくつか試して続けやすいものを2〜3つ選んでおきたいところです。(※17)
※17
ストレスへの対処状況をセルフチェックする方法

自分にかかっている負担の大きさは、渦中にいるときほど見えにくく、気付いたときには疲れがたまっています。厚生労働省の資料が勧めているのは、身のまわりにストレス要因がないか、気付かないうちに心身へ反応が出ていないかを確かめることです。
同資料のなかで紹介されているのが、こころの耳のサイト上で公開されている全57問のセルフチェックです。(※18)ここでは、特別な道具を使わずに日常のなかで自分の状態を振り返る方法を、順を追って確かめていきましょう。
※18
心・身体・行動の変化を振り返る
厚生労働省の資料では、ストレスが大きくなったときの変化について、次の3つの側面に分けて整理されています。
複数の側面にまたがって変化が出ているのなら、それは負担がかなり大きくなってきたサインの可能性があります。(※19)気になる変化が続くようであれば、一人だけで判断せず、医療機関や相談窓口へできるだけ早めに相談してください。
※19
ストレスへの対処力を高める方法

その場での対処に加えて、そもそも強い負担を受けにくい土台を日頃から整えておくという視点も欠かせません。厚生労働省の睡眠ガイド2023では睡眠の役割として、1日の活動で蓄積した疲労やストレスからの回復が挙げられています。(※20)
日頃の土台を整えておくことで、同じ出来事に直面しても受け止め方に余裕を持ちやすくなることがあります。ここでは、日頃から無理なく続けられる3つの取り組みについて、1つずつ順番に詳しく取り上げていきましょう。
※20
睡眠・食事・運動など生活習慣を整える
同資料と厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023を踏まえると、日頃意識したい目安は次の3つになります。(※21)
3つを同時に変えようとはせず、取り組みやすいものから1つずつ始めたほうが長く続けやすくなるでしょう。
※21
※22
物事の捉え方を振り返る

自分自身に課している前提をあらためて見直してみるだけでも、負担の受け止め方は大きく変わることがあります。厚生労働省の睡眠ガイド2023では、眠気がないまま無理に眠ろうとすると脳の興奮がむしろ高まると解説されています。(※23)
これは、眠りをよくしようとした本人の意図が、結果として自分自身の負担を強めてしまう典型的な一例です。仕事や家事についても、こうあるべきだという自分なりの前提が負担を押し上げている場合は少なくありません。
そこまで求める必要が本当にあるのかどうかを書き出して確かめてみると、手放せる部分が見えてくるでしょう。
※23
自分に合ったストレスコーピングを見つける
厚生労働省のこころの耳では、ストレスコーピングを特定のストレスフルな問題や状況に対する対処方法と解説し、次の2つに分類しています。(※24)
自分では動かしにくい問題にまで問題解決型を当てはめようとすると、かえって消耗しやすくなってしまいます。
※24
ストレスへの対処が難しい場合は一人で抱え込まず相談する

セルフケアをしばらく続けていても状態が戻らない場合には、そろそろ専門家へ相談する段階に入った合図です。厚生労働省の睡眠ガイド2023では、睡眠環境や生活習慣を見直しても眠りの問題が続く場合は、医療機関へ相談するよう示されています。(※25)
同資料には、不眠症がストレスを契機として発症する場合が少なくないという解説も併せて添えられています。(※26)厚生労働省の資料が、一人で抱え込まずに頼れる相談先として紹介しているのは次のような3種類の窓口です。
産業保健総合支援センター:全国の都道府県に設置され、働く方や事業場の健康相談に対応
精神保健福祉センター:各都道府県と指定都市に置かれ、こころの健康全般について相談できる
こころの耳の電話相談:厚生労働省が働く方向けに案内している相談窓口
誰かに話すこと自体がセルフケアの一部であり、早い段階で頼るほど選べる手立ても着実に増えていくでしょう。(※27)
※25
※26
※27
自分に合った対処法を増やしてストレスとうまく付き合おう

ストレス耐性というものは、生まれ持った我慢強さや性格の傾向だけで決まってしまうような力ではありません。厚生労働省の職業性ストレスモデルが示すとおり、物事の捉え方と対処行動、周囲のサポートが重なって反応の大きさは決まります。
いずれも後から増やしていける領域を含んでいるため、性格そのものを無理に変えようとする必要はありません。負担を感じたら原因から一時的に距離をとり、続けやすい休息や気分転換の方法をいくつか試してみてください。
日頃から生活リズムを意識しながら、2種類のコーピングをそのときの場面に応じてうまく使い分けましょう。それでも状態が戻らないと感じるときには、医療機関や相談窓口を早めに頼るという判断も必要になってきます。
自分に適した対処法を1つずつ増やしていくことで、ストレスとの向き合い方が少しずつ変わることもあります。
